自身の制作環境でMetaHumanを「フルカスタムの頭部で衣装を含む丸ごと一体」どこまで作れるのか検証を試みる。
作成時の基本ルール
1日で作成するのて “ブラッシュアップ前のベースモデル” を作る感覚で制作をし、細かな部分は作り込まない。作り直しが発生しないようブラッシュアップ工程を踏まえ、基礎をしっかり整えた上で作る。また
制作上の細かな工夫は絶えず考え今後に活かすと同時に、データは再使用を考え今後の使いやすさも配慮する。
レギュレーション
1.時間節約のため MetaHuman Creator は使用しない
過去にダウンロートしたものをベースモデルとして使用する
2.過去の個人制作資産を効率的に使用してよい
3.衣装はChaos Cloth で作成し、部分的に物理処理を与える
4.”なるはや”制作でも非効率な部分は新たな手法を模索する
5.最終的にUE5でキャラクターが動くところまで処理する
6.工程に区切りを持たせるため、節目に X へ投稿しログを残す
作るモデルはよく見させていただいている YouTube チャンネルの VTuber の方。
もちろん商用利用目的ではないですし、個人で勝手に作るだけなので無許可です。
つまり「個人で作って楽しむだけ」ってことです。
さて作っていきますか。
「頭部」をカスタムする
まずは過去の制作物からベースモデルをもってきて、ZBrushやMayaでモデリングをおこなう。細かな調整も含めUE5 ( UE5.4 ) で必ずMetaHumanの頭部データと差し替えフェイシャルのテストもおこない破綻がないかチェックをおこなう。
ZBrushとMayaの作業上での使い分けはZBrushで大きく調整して、Mayaで詳細を調整するといった感じ。私にはどうしても大味なZBrushのインターフェースでは微調整の作業がしにくいため、Mayaでのフィニッシュワークがいつも必要ななる。だが、逆にMayaでは自由の高い直感的な作業がしにくく、こちらではインターフェースではなく作成物が大味になってしまう。
なるはやで、なんか作る。
私はデジタルヒューマン系だけで生計を立てる数少ないタイプのデザイナー。無名ですが意外と仕事はいただいている感じの不思議な人間です。
基本スピード勝負、だからストックも命。
…この作品も今後ストックになる。ストックを使用し速攻でモデルを作成開始。… pic.twitter.com/kk4qtILwFH
— Yanagishima HiD (@Yanagishima_HiD) October 13, 2024
「髪の毛」をカスタムする
いつも通りMayaのXGenを使用し制作、過去の制作物から髪型のイメージが似たものを持ってきて作成をおこなう。もちろん頭の形やサイズが違うため、今作成している頭部に元の頭部をシェイプシフト(?)することで対応をおこなう。
「形が違うなら、同じ形にすればいい」
といった考え。元の頭部には予めXGenが追従するよう、発生元となる頭皮モデル等をラップしておく。髪の移植が終わったらガイドカーブを必要に応じて追加、削除を繰り返しながら髪型をととのえていく。完成したらAlembicファイルで書き出しUE5に取り込んでいく。
なるはやで、なんか作る。
次は「髪」を作る
過去作の使えそうなXGenのデータを流用し加工する。
XGenの生成元モデル(頭皮モデル)は、流用する元の頭部モデルにラップ処理で定着させ、その頭部をアトリビュート転送やブレンドシェイプで新しい頭部に形状変更することで頭の形を合わせ使用する。 pic.twitter.com/pkxjHm9PEq
— Yanagishima HiD (@Yanagishima_HiD) October 13, 2024
「衣装」をカスタムする
衣装は Marvelous Designer (以下MD)で作成するのが現状最速。ただし苦手なものも多く、できないものはZBrushとMayaで制作することとなるため、作成時に「MDか」「それ以外か」の適切な選別が必要となる。その際は、ただ「作れる」「作れない」だけではなく、「作れるが制御しにい」「形を維持するのが困難」といったものも考慮することが重要となってくる。
今回はオーバーオールの胸の留め金と、首に巻きつけ縛っている風呂敷(※)をMayaをメインに制作し副資材 (Trim) として作成しMDに取り込んでいる。
※作れないことはないが、形を維持するのが難しい
MDのUVエディットはけっこう使いやすく設計されている。もともとのモデリングが生地のパターンで作成するといった概念であるため、最初から展開図となっているパターンのUVでは細かな頂点の編集が不要。パズルのピースのようにUVの升目をどの様に埋めるのかといった作業となる。
「だから、バズって楽しむ」
パズルといっても正確や不正解といったところは判断が難しいが、MD の UV Packing (自動配置)と比較し各パターンのピースの面積が大きく、無駄なく配置されていればそれがパズルとしての正解であると判断してよいかと思う。
「もちろんUVレイアウトとしての美しさも必要」
今回もパターンの面積、配置の無駄のなさ、レイアウトの美しさで私の勝です。
なるはやで、なんか作る。
次は「衣装」を作る
Marvelous Designer(以下MD)できない部分を精査し、難しいものはMaya等で作成しMD内で副資材(Trim)として使用する。
サクサクっと作成
UVはパズル感覚で楽しむ。正解はないが、MDの自動配置と比較し勝っていれば正解で勝ち。
「今回も私の勝」 pic.twitter.com/wdQ7WDF6RG
— Yanagishima HiD (@Yanagishima_HiD) October 13, 2024
「追加モデル」でカスタムし、「ChaosCloth」で衣装の一部を揺らす
制作中いろいろ追加で必要となってるパーツ群、これらは静的なもの動的なものも含めZBrushとMayaをメインに作成をしていく。動的なものはセットアップが必要なため現状Mayaで作業をおこなっている。今回は付け耳、胸の留め金と、首の風呂敷、しっぽ等のモデルを作成している。
動的なモデルとしてはしっぽを作成しており、ボーンを仕込んでUE5上の Kawaii Physics で揺れ物として制御をおこなう。
MDで作成した衣装をUE5に取り込み、Chaos Cloth で設定する。最終的には上着の裾やオーバーオールを部分的に揺らす予定でいるが、今回は時短作業で腰紐の垂れものにのみに揺らす設定をおこなっている。クロスの設定はモーションでしっかりと動かした状態で確認しながら調整する必要がある、そうしないと、いざ動かして見た時に思った動きにならなかったり、最悪は引きちぎられるように破綻したりしてしまう。
なるはやで、なんか作る。
次は「データ実装」を作る
髪、衣装、ミミ、しっぽ、その他をUE5に取り込み整備する。"しっぽ" は揺れ物なのでMayaでボーンを仕込み作成。
今日はこのままコントローラーで動作させるところまでやってしまう。 pic.twitter.com/Gq9YSHjM4y
— Yanagishima HiD (@Yanagishima_HiD) October 13, 2024
「作成物を終結」でMetaHumanをカスタムする
今日作成したものを全て終結させ、UE5上で1つのブループリントにまとめ、1体の MetaHuman として確立させ仕上げる。今回は揺れ物もあるためしっかりと動かし確認する必要がある、そのためプロジェクトのプリセットはサードパーソンのプロジェクトを使用し作業している。こちらのプロジェクトではブループリント等の調整で、リターゲットによる試作キャラ制御をおこなう事ができ、キーボードやコントローラーを使用しゲーム感覚で動かすことが可能となる。
なるはやで、なんか作る。
プロトタイプができたのでチェックのため「動かす」
動かしてみるといろいろわかることがあるので、とにかく動かしてみる。
いろいろ不備が見られるようなので今後調整をしないとです。
続きは来週末くらいにしようかな。 pic.twitter.com/BtQhWfOSfl— Yanagishima HiD (@Yanagishima_HiD) October 13, 2024
最後に
今回は1日で作るといった感じで「なるはや」制作をおこなったが、プロトタイプ制作だけではなく、物によっては完成系までも作成可能なのではないか? といった感触も得られた。もちろん過去作の資産に衣装や小物、髪型などが有り、それら要素が使いやすく整備され、尚且つ幸運にも全体的に調整幅が少ないといった状況が重なる必要はあるが、けっして不可能ではないものと考える。
今作っている作品もそうだが、今後は更にデータ再利用時の事に配慮したフォーマットの整備が「肝」になってきそう。
次回は、このモデルのブラッシュアップ工程を次週にでもおこない、仕上げていきたいと考えている。仕上げは1日では難しい為、最低でも2日~3日間はかかるものと予測している。